◆相談者様
G4あたりの地声が苦手な10代男性
◆質問相談内容
G4付近が苦手で、特にイ行ウ行が苦手
出せる様にはなってきたが、特にイ行がハイラリで鼻にかかったような声に感じる
◆回答内容
こんばんは、声を拝聴しました。コメントさせて頂きます!
恐らくハイトーン発声時、特に苦手な音域付近で顕著に顎の下の筋肉の集まり「舌骨上筋群」が硬くなっているのではないかと思います。
自分の顎のお肉を指で下から押し上げて下さい、通常はプニプニと柔らかいと思います。舌骨上筋群が硬くなっていない状態です。
恐らくハイトーンを出している時はここがカチカチに硬くなっているのではないかと思います。
舌骨上筋群の過緊張によって舌は押し上げられます。(厳密にいうと色々ややこしい動きがあるのですがここでは割愛します)
そうすると声や音の出口である口が塞がれてしまうので、鼻から出さざるを得なくなって鼻にかかった様に感じてしまうのかもしれません。(僕はそんなに鼻にかかった感じは気になりませんでしたが、相談者様が気になっているのはそれが原因だと思います)
解決法はこの舌骨上筋群の過緊張を解く事なのですが、これは結構やっかいなものとなります。せっかくなのでメカニズムからお話しますね。
高い音を出すためには、声帯をピンと張って張力を高める必要があります。そして強い声を出すには声帯閉鎖が必要です。
舌骨上筋群は、上記2つの働きを促進する効果があるのです。
つまり、相談者様は
・高い声を出すための声帯の張力や閉鎖の力が足りない(あるいは足りなかった)
・代償的に舌骨上筋群で補っている(あるいはそのクセがつあてしまった)
という状態だという事です。
その為舌骨上筋群のリラックスを直接狙うと、必要な力が不足して逆に声が出なくなったりひっくり返ったりするという事が考えられます。
対策として
①ホイッスルボイス(出せれば)
②裏声の高音を、舌骨上筋群の緊張無しで出す練習
この2つをお勧めします。
①についてはもし出せればやってみては、くらいな感じなので説明は割愛します。なのでここでは②のやり方を解説しますね。
1.まずは楽に出せる高さの裏声を「ウ」「イ」でそれぞれ出します。
この時に顎を下から押し上げて、プニプニしているのを確認して下さい。(なお、「イ」は発音するために多少舌骨上筋群を働かせる必要があるため、「ウ」に比べると少しだけ硬くなると思います。)
2.このプニプニした状態のままどこまで裏声の音程が上げられるかやってみて、顎の下が硬くなり始める音程を探してください。
3.例えばドまでプニプニでド#で硬くなる場合、このド#を出しながら顎の下をリラックスさせていく練習をします。
顎の下がプニプニしたドを出しながら騙し騙し音程を半音上げていくと、時々顎の下が硬くならない時があるはずです。
その時の感覚を掴んでいく事で、舌骨上筋群に頼らない音程上昇が出来る様になっていきます。
4.あとは徐々に硬くならずに出せる音域を広げていくだけ
この手順で、舌骨上筋群が緊張せず出せる裏声の高音域を伸ばしていきましょう。
十分伸ばせたらあとは地声で同じやり方をすれば、地声でも緊張が緩和出来る様になるかと思います。
以上が練習法になります。
ちなみにG4付近が苦手な理由ですが、この辺りにいわゆる換声点があるからです。
頂いた声のサンプルでも最高音(このフレーズだとB♭4)は少し声質が変わっていますよね。
これは小さなひっくり返りが起きている証拠で、それより低い音に比べて少しだけ地声の筋肉が解けて裏声に近くなっているという状態です。
相談者様の場合、地声の強さを保てるのはG4あたりが限界で、それ以上の高さになると少しだけ裏返った状態にしないと声が出せないという事ですね。
当然地声の強さを保った状態より裏返った(=裏声に近い声)状態の方が要求されるパワーは弱まりますから、G4を超えた音域の方が楽に感じるのだと思います。
このひっくり返りに対する解決法は「レジストレーション」という地声と裏声を連絡する訓練が最適です。ぜひチャレンジしてみて下さいね。
以上、またまた長くなってしまって恐縮ですが僕なりのコメントでした!何かのご参考になれば幸いです!
◆相談者様からの返答
顎の下は意識したことが無かった
力みとシャクレがあるが、これはマズいのか?
◆回答
声を聴く限り、中音域くらいから過緊張になってるみたいですよね。
顎がしゃくれるという事ですよね?これも全く同じ様な理由なのですが、んーこれについては改善するに越したことはないけどあんまり気にしすぎなくても良い、という感じですね。
恐らく舌骨上筋群の訓練をするうちにしゃくれも勝手になくなってくるかと思いますよ!
◆相談者様からの返答
力みとシャクレが癖になっていたから解消したらかなり変わる気がする
裏声の高音は通常全く力みが入らないものなのか?
◆回答
顎系の癖は取るのがかなりやっかいなので、根気強くやってみて下さいね!
裏声の高音に関しては、正直僕も多少は硬くなっちゃいます。笑
この辺りは「今より軽減すれば良い」と言った感じで考えてもらえば大丈夫です。
細かい話になりますが、実際には舌骨上筋群にも沢山の筋肉があるので、それぞれ働きは微妙に変わってきます。
入ってもそんなに問題にならない筋肉もあるのですが、ザックリ「解けることで楽になったらいい感じ」くらいの認識でいいかと思います。
また、先程お話したホイッスルボイスのような極高音に関しては、逆にこの舌骨上筋群の働きがほぼ必須だという意見も多いです。
その為ホイッスルボイス付近になってきたら顎の下が硬くなっても全然気にしないでOKだと考えて良いと思います。
レッスンでお会いしていないのであまり詳しくお伝えできなくてもどかしいですが、ここで答えられる範疇ならお答えするので気になることはぜひ沢山聞いてくださいね!
その後は雑談をして、やり取りは終了しました。
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